島根県を初めとして、山陰にはワニが登場する神話や伝承が数多く残されています。その代表格が「古事記」に出てくる、因幡の白兎です。
その他にも「出雲国風土記」にもワニが登場する神話が二例あります。ひとつは、意宇群の安来郷でに話で、娘をワニに食べられた語臣猪麻呂が
復讐を遂げる話です。もう一つは、仁多郡の恋山に残る話ですが、タマ姫を慕い川を遡って来たワニに対して、姫が嫌って石で川を遮ってしまう。
此方は、ワニの失恋話です。こうした神話や、伝承に登場するワニとは、どんな生き物なのでしょうか?諸説があるようですが、有力なのがサメ説です。
しかし、サメ説も「出雲国風土記」に出てくるワニの記述が「和爾」と「紗魚」に書き分けられています。違う生き物なのか、疑問が残ります。
山陰では、現在でもサメを使った料理を「ワニ料理」といっています。サメを食べる主な地域としては、仁多郡奥出雲町の横田周辺や、鳥取県日野郡日南町
辺りや、広島県三次市周辺などの山間部です。サメが  山間部で食べられる様になった訳は、保存の問題があったからだと考えられています。
現在では冷凍技術が発達していて問題は無いと思いますが、昔は漁港から山間部へ魚を運ぶのは容易な事では無かったようです。
サメは尿素で浸透圧調整を行っており、死ぬとこの尿素が分解されてアンモニアに変わり、サメの腐敗を抑える役目があったようです。
そのお陰で、山間部でも刺し身として食べられる唯一の海の魚が、サメであったようです。

中国地方の山間部ではワニ(サメ)を食べます。